遠い極彩色のなかの微笑み╿奈良県 宇陀市の室生寺と菩薩についての解説

こんにちは、はてはてマンボウです。今回は山深い奈良県の奥地を回遊しています。

梓「さて、今回は室生寺の麗しい菩薩像を巡る冒険だ」

マ「あ、連理梓さん。今回も旅のご案内、お願いしますよう~」

室生寺までのアクセス

梓「奈良駅から列車で行く場合は、まずJRの桜井線で桜井駅まで向かおう」

マ「ワンマン列車の、のんびりした旅ですねえ」

梓「桜井駅にて近鉄電車の急行へ乗換えだ」

梓「室生口大野で降りたところで、およそ1時間。ここから、バスに乗ればざっと15分で到着だ」

マ「いやあ、やっと着きますねえ、はってはて♪」

梓「ところが、バスは1時間に1本なので、電車とタイミングが合わないことも大いにある」

マ「ま、まあんぼう」

梓「駅前にはタクシーも並んでいるから、これを利用するのも手だよ」

マ「むうん、しょうがないわねえ。豪勢にタクシーを使っちゃおうかしら」

梓「だけど、タクシーの旅もなかなか捨てたものじゃないよ。ほら、ちょっと車を停めてもらって、宇陀川の向こう側を見てごらん」

マ「はて、なにやら大きな岩が」

マ「はて! なにやら、仏像のようなものが」

梓「鎌倉時代にできた弥勒菩薩の磨崖仏だ」

マ「おお、こんなところにも磨崖仏があったとは」

「神と仏が出会うところ」╿石仏が集まる大分県 国東半島
↑「磨崖仏ってなに?」という方はこちらをクリックしてくれ~まあんぼう~

 

マ「やっと辿り着きました♪ さあ、たっぷり回るぞ~おらおら~」

室生寺ってどんなお寺?

梓「室生寺は真言宗室生寺はの大本山だ。ご本尊は釈迦如来」

マ「ちょこちょこ書いてある、『女人高野』というのは、なんですか」

梓「かつて、高野山は女人禁制だった。一方で、室生寺は女性の参詣も許されていたことから『女人高野』と呼ばれたんだ。ちなみに、高野山の金剛峯寺は真言宗の開祖である空海が建てた寺」

マ「同じ真言宗でも、違いがあったんですねえ」

梓「真言宗は密教を広めた一派だった。密教独特の仏像と言えば、まず明王」

マ「これは、なに明王なんですか」

梓「この石仏は、一面八臂に、両手の甲を交差させ、片足を踏み出しつつ、両の脚を蓮華座に載せるこのスタイルは、おそらく軍荼利明王だろうな。五大明王の1人だね」

マ「は、はて……なんだか、いろんな特徴があるんですねえ」

梓「いろんな仏像を見ていれば、自然と覚えるものだよ」

マ「まぼ」

マ「こっちはどんな仏さまですか」

梓「左手の人差し指を右手で包み込む智拳印(ちけんいん)は大日如来の証。密教において大日如来は、宇宙の中心、仏のなかの仏と位置付けられている」

梓「境内には、随所に石仏が安置してあるよ」

境内をぐるっと回ってみよう!

梓「さて、まずは仁王門からスタートだ」

  

マ「金剛力士が迎えてくれます。赤と青で対照的ですねえ」

梓「口を広げている方が阿形、口を閉じている方が吽形だ」

マ「ひええ、険しい階段です」

梓「室生寺は、山麓から昇りつつお堂を配する、いわゆる山岳寺院だからね。鎧坂と呼ばれる石段を上ると、金堂が見えてくるよ」

マ「中腹からてっぺんまで、かなり距離が離れているように見えますよ。なんだか嫌な予感」

梓「金堂には、本尊の釈迦如来や十一面観音菩薩立像、十二神将といった仏像が安置されている」

梓「弥勒堂を過ぎると、今度は本堂が見えてくる。本堂では密教の特別な儀式が行われる」

マ「本堂からさらに階段を昇ると、立派な建物が見えてきましたよ」

梓「五重塔は1998年、台風で倒された杉の木が倒れてきた結果、大きな被害を受けたものを、再建したんだ」

マ「も、もうけっこう登りましたけど、これよりさらに上があるんですか、はて」

梓「さ、五重塔へしばしの別れを告げて。600段ほどの階段を登ると奥の院に着くよ」

マ「うっそうとした木々の隙間を歩いていくんですねえ」

マ「うわあ、いつのまにかこんなに高いところまで」

梓「さて、奥の院に着いたよ」

マ「なんだか、危なっかしい崖沿いに作ってあるのねえ」

梓「ここまで、のんびり歩いて1時間というところかな。帰りは下り坂だから、あっというまに下まで着くよ」

色あせた極彩色の十一面観音と菩薩像について


奈良大和 四寺巡礼編「室生寺」より(2019年2月7日参照)

梓「さて、金堂にはたくさんのすばらしい仏像が安置されている」


『中尊 釈迦如来立像』女人高野 室生寺「室生寺の仏たち」より(2019年2月7日参照)

マ「真ん中に立っているのが、ご本尊ですね。お釈迦さまですか」

梓「そのとおり、釈迦如来だ。だけど、もともとは薬師如来としてまつられていたのでは、とも言われている」


『十一面観音像』 女人高野 室生寺「室生寺の仏たち」より(2019年2月7日参照)

梓「さて、女性かと見まがうようなこの像は、十一面観音菩薩立像だ」

マ「色あせてはいるものの、薄茶色の肌の周りを赤や緑の色彩が覆っていますね」

梓「柔らかな頬と穏やかな半眼をたたえるこの観音様は、今ではもう薄れてしまった極彩色がずっと鮮やかだったろう遠い昔から、この金堂におわしたのだろう」

マ「そういえば、さっき見たお釈迦さまよりは格好が派手ですよね。胸元にも飾りがいろいろありますし」

梓「如来は、悟ったのちに質素な生活をしていた釈迦の格好をモデルにしているから、服装も袈裟のみだ。一方で、菩薩とは『悟りを求める者』という意味で、修行中の釈迦をモデルにしている」

マ「修行中のお釈迦さまは、豪勢な格好をしていたんですか」

梓「釈迦は王族の出身だったことを意識して、優美な姿を用意しているんだ。菩薩は、将来的に如来となることが約束されているんだけど、より多くの人々を救うために、人々により近い、同じ修行中の立場にあえて留まっている、という位置づけにある」

マ「へえ、菩薩と如来に、そんな違いがあったとは」

梓「自分たちを見守ってほしいという思いから生まれたのが、この十一面観音。十一の頭であらゆる方向を見てくれる」


『如意輪観音像』 女人高野 室生寺「室生寺の仏たち」より(2019年2月7日参照)

梓「本堂にいるのは、如意輪観音だ。一面六臂の菩薩さまは、あらゆる願いを叶える『如意宝珠』と、釈迦の教えを象徴する『法輪』を持つことから、この名前がついた」

マ「よく見ると、両方の足の裏がくっついています。身体が柔らかいのねえ」

梓「両足裏を重ねる『輪王坐』のポーズがよく見られるね。また、頬に手を当てている仏さまは、だいたいが人々を救う方法を思案している」

梓「自分たちを見守ってほしいという思いから生まれたのが、この十一面観音。十一の頭であらゆる方向を見てくれる」


『弥勒菩薩像』 女人高野 室生寺「室生寺の仏たち」より(2019年2月7日参照)

マ「最初に宇陀川で出てきた磨崖仏も、弥勒菩薩でしたよね」

梓「釈迦が入滅して以来、この世はしばらく如来不在となってしまう。そこで、釈迦の死から五十六億七千万年後に人間界へ現れるとされたのが、この弥勒菩薩。そのまま弥勒如来になると考えられている」

マ「ご、五十六億……」

梓「まさにインド的なスケールの大きさを表す例だよね」


『地蔵菩薩立像』 女人高野 室生寺「室生寺の仏たち」より(2019年2月7日参照)

マ「はて、最後にお地蔵さんが出てきました」

梓「これもまた、菩薩の一種なんだよ」

マ「たしかに。そういえば、地蔵菩薩って言いますもんねえ。でも、頭には飾りがなくて髪をそっていますし、格好もほかの菩薩と違って地味です」

梓「地蔵菩薩については僧形を表しているから、質素な姿になったんだ。弥勒如来が現れる五十六億七千万年後までの間、救われずに苦しんでいる人々を導いてほしいという要請から生まれた」

マ「仏像にも、いろんな由来があるんですねえ」

 

【特集】仏の世界の四階層╿如来・菩薩・明王・天
↑↑「いろんな仏さまについて知りたい!」という方は、こちらをチェックしてみてくれ~まあんぼう~

基本情報のまとめ

☆室生寺 ≫公式HP

〒633-0421 奈良県宇陀市室生78

≫GoogleMapで開く

≫筆者:連理梓
≫来訪日:2018.06.24

参考文献
〇真言宗室生寺派 大本山 室生寺編(2000)『女人高野 室生寺』(飛鳥園)
三好和義(2015)『室生寺』(クレヴィス)
〇薬師寺君子(2016)『写真・図解 日本の仏像 この一冊ですべてわかる!』(西東社)

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