こんにちは、はてはてマンボウです。今回は瀬戸内海の海流に運ばれて、大分県に来ています。
梓「今回は国東半島の旅だね」
マ「あ、連理梓さん。く、くにひがし……」
梓「くに”さき”半島」
マ「は、もちろん気づいてましたよ」
国東半島ってどんなところ?
梓「国東半島は、周防灘や瀬戸内海に囲まれた、大分県東部の半島だ」
マ「文字通り、国の東にあるんですねえ」
マ「はて、岩に彫り込まれた仏さま」
マ「はて、こっちにも石仏。あっちこっちにいますねえ」
梓「国東半島は石仏があふれた不思議な町なんだ」
マ「はて、世界遺産を目指しているようです」
マ「それも、あちらこちらにのぼりが。しかし、宇佐神宮、はて」
梓「宇佐神宮は、国東半島の少し西側にある神社。八幡宮の総本社だ。日本史を勉強している人だったら、奈良時代の『宇佐八幡宮信託事件』なんかでピンと来るかもしれない」
マ「八幡宮の総本社ってことは、岩清水八幡宮だとか、鶴岡八幡宮なんかの中で、一番偉いということでしょうか」
梓「ざっと言うとそういうことになるね。この宇佐神宮が、六郷満山と呼ばれる国東半島の文化に影響を与えている」
マ「ろ、ろくごう……」
梓「まんざん」
マ「まあんぼう」
山岳修行と八幡信仰の出会い╿六郷満山の文化
梓「国東半島の六つの郷に開かれた寺院の総称が六郷満山」
マ「お寺の集まりってことは、仏教の影響が強そうですねえ。あ、でも、さっき出てきた宇佐神宮は神社でした」
梓「宇佐神宮は、日本古来の神さまと仏教の仏さまを同一視する『神仏習合』の発祥の地と言われている。八幡大菩薩、とか聞いたことないかい」
マ「はて、あるような、ないような」
梓「神道の八幡さまと、仏教の菩薩さまがくっついて、八幡大菩薩。この、神仏習合の文化を持つ宇佐神宮から影響を受けて、独特の山岳文化を生んだと言われている」
マ「なんだか難しいわねえ」
梓「追儺式が変化した独特の火祭りも生まれた」
マ「ええと」
梓「ついな、式。別名、鬼やらい。節分の始まり」
マ「はてえ、勉強になります」
梓「とにかく今回は、神と仏が一体となる豊かな文化が国東半島にはあったってことを覚えてくれればいいよ。神仏習合の詳しい話は、またの機会に話そう」
九州一古い木造建築! 日本三大阿弥陀堂の一つ、富貴寺大堂
梓「さて、富貴寺にやってきた。ここは平安時代、宇佐神宮の大宮司の氏寺として開かれたのが由緒」
マ「こんなところにも宇佐神宮の影響が」
マ「厳かな入口ですねえ」
梓「これは仁王門。ということは」
マ「あ、かわいい仁王さま。五頭身ぐらいでしょうか、ちいちゃい子みたいねえ」
マ「参道をのぼった先から振り返ると、どっしりと構えた仁王門が見えます」
梓「さ、いよいよ大堂に着いた。これは阿弥陀堂だね」
マ「阿弥陀さまがまつってあるんですか」
梓「そういうこと。平等院鳳凰堂、中尊寺金色堂と並んだ日本三大阿弥陀堂の一つで、九州最古の木造建築物でもある」
マ「あたりにぜんぜん人影がないですけど、由緒あるとても大切な場所だったのねえ」
鬼が築いた石段の先に待つ……胎蔵寺の熊野磨崖仏
梓「さて、今度は熊野磨崖仏を見てみよう。町中から少し離れた山の中にある胎蔵寺には車で行くのが一番。ここから、長い坂道を登っていく」
マ「すぐに山のなかに入っていきますねえ。しかし、この山を切り開くのは大変だったでしょうねえ」
梓「『熊野権現の森』の名は、紀州の熊野三山から熊野権現を分霊してもらったことに由来するらしい」
マ「分霊ってなんですか」
梓「霊験あらたかな神社の神さまを、別の場所でもお祭りできるようにすること」
マ「けっこうのぼったのに、鳥居の向こうに、まだ先が」
マ「は、はてえ……」
マ「つ、着きました……雑に積まれた石段をのぼるのは骨が折れますねえ」
梓「さあ、国東半島最大の磨崖仏のお目見えだ。向かって右が大日如来、左が不動明王。どちらも坐像だ。全長約7メートル」
マ「7メートル……こんな大きい石像を、どうやって石から掘り出したんでしょうか、はて」
梓「平安時代から千年の時を経て削られてしまっている部分もあるものの、逆立つ牙や右手の剣は不動明王の証とはっきりわかる」
マ「少し笑っているようにも見えますね」
梓「こっちは大日如来」
マ「まぼ? 頭のうえに、なにか描いてあるような」
マ「まぼまぼ。サンスクリット語というやつでしょうか」
梓「これは種子曼荼羅という。仏を表す梵字、つまりサンスクリット語を使って、曼荼羅を表している」
マ「へえ、これもマンダラなんですねえ」
梓「曼荼羅は、文字に起こした経典だけでは伝えられない密教の世界を視覚化するための道具だ。ちなみに、大仏如来は密教世界の中心物でもある」
マ「大日如来の頭のうえにこんな丁寧な曼荼羅を描くなんて、どんな技術を使ったのか、気になります。はて」
マ「振り返ると、すごく険しい道をのぼってきたんだってわかりますねえ」
梓「ここまでの険しい道は、鬼が一晩で作ったという話がある。けっこう有名な逸話だよね」
マ「へ、マンボウは初めて聞きましたよ」
マ「石段を登りきると、熊野神社に着きました」
梓「さ、熊野権現におまいりして、ゆっくり帰ろう」
《まとめ》三大阿弥陀堂と阿弥陀如来
↑「三大阿弥陀堂ってなに?」「阿弥陀如来ってそもそも何者?」という方はこちらをクリックしてくれ~まあんぼう~
基本情報のまとめ
富貴寺
「昭和の町・豊後高田市公式観光サイト」(大分県観光情報ポータル)
〒879-0841大分県豊後高田市田染蕗2395
熊野磨崖仏
「昭和の町・豊後高田市公式観光サイト」(大分県観光情報ポータル)
〒879-0853 大分県豊後高田市田染平野2546−3
≫筆者:連理梓
≫来訪日:2015.03.26
※「はてはてマンボウのブログ」は移転しました。
はてはてマンボウの 教養回遊記 (hatehatemanbou.com)
参考文献
〇宇佐国東半島を巡る会編(2016)『国東六郷満山 宇佐神宮と国東半島霊場札所巡り』(木星舎)
〇逵 日出典(2007)『八幡審と神仏習合』(講談社現代新書)