こんにちは、はてはてマンボウです。今回のマンボウは、山しかないのに山梨県は甲府市に来ています。マンボウ、海がなくてさみしいわねえ。
はて、駅前に立派な像が。兜をかぶって、どっしり座ってます。
梓「それは信玄公だよ、マンボウちゃん。山梨県といえばもちろん、武田信玄だよね」
軍配、兜に歴史小説……信玄公にまつわるあれこれ
マ「ああ、連理梓さん。像の右手にあるのはなんでしょう」
梓「それは軍配だよ。川中島の合戦のとき、上杉謙信が本陣に斬りこんできたのを軍配で防いだエピソードが有名だ」
マ「へえ、それじゃあ、あの兜は」
梓「あれは諏訪法性兜」
マ「す、すわ……」
梓「すわほっしょうのかぶと。長野県の諏訪大社は軍神・諏訪明神を祀っているから、その勝利の力にあやかる兜ということだね」
梓「連理梓さんは詳しいですねえ。あれ、でも山梨のご出身ではなかったような」
梓「小学生のときに新田次郎の『武田信玄』を読んで以来の武田家推しとしては当然の一般教養だ」
マ「新田次郎、はて」
梓「『武田信玄』は『三国志』で有名な横山光輝原作でマンガになったり、大河ドラマ化されたりしているんだ」
マ「有名な小説なんですねえ」
梓「武田信玄にまつわる本はたくさん出ているから、それはまたの機会に紹介しよう。今回は信玄公ゆかりの地を巡礼していくよ」
躑躅ヶ崎が夢の跡╿武田神社
梓「最初にやってきたのは、ここ、武田神社だ。甲府駅からの一本道をおよそ3キロ北へ進んだところにある」
マ「あの青い旗はなんですか」
梓「信玄公の旗印、風林火山だ」
マ「風林火山はマンボウも聞いたことがあります! でも、旗には漢字しか書いていないような」
梓「もともとは『孫子』の一節だからね、漢文なんだよ。信玄公は孫子の体現者だった」
梓「さて、ここ武田神社は、信玄公を祭神としている神社。もともと、武田家の本拠だったんだ
マ「ほんとだあ。『武田氏館跡』って書いてますねえ」
梓「この館とは『躑躅ヶ崎館』を指している」
マ「よ、読めない。まぁんぼう……」
梓「つつじがさき、だ。武田家の本拠本丸のこの躑躅ヶ崎の跡地に、武田家のための神社が作られた」
マ「それじゃあ、ここはもともとお城だったんですか」
梓「城というよりは、館、だった。よくイメージされるお城とは違って、政務の中心という具合だね」
マ「連理梓さん、ほら、見て見て! 手を洗うところが、なんだか不思議な形をしてますよ」
梓「それは武田菱をイメージして作られた手水舎だね。武田家の家紋は菱形なんだ。神社の敷地内や、宝物殿でもたくさん見られる」
梓「さあ、次は圓光院に行こう。武田神社から1.5kmと近い」
信玄公にまつわる2つの墓所╿圓光院と名もなき火葬塚
マ「ここに、武田信玄のお墓があるんですか」
梓「ここは、信玄公の正室、三条の方の墓所があるんだ」
マ「お人柄の真実、はて。なんだか含みがあるような」
梓「新田次郎の『武田信玄』をはじめとして、三条の方は貴族の性悪として描かれることが多いからね。娯楽作品の影響は大きい。お寺としても、汚名をそそいであげたかったのだろう」
マ「あれ、圓光院を下ったところに、風林火山の旗が。この辺は、ただの路地なのに」
梓「信玄公の墓所はここなんだよ」
マ「は、はてはて! どうしてこんなところにぽつんと」
梓「いつのまにか埋もれてしまっていたのが偶然、江戸時代に見つかり、掘り返したらしい」
マ「見つからなかったら、ずっとだれも気づかないままだったかもしれませんねえ」
もう1つの善光寺と、数奇な運命をたどる善光寺如来
梓「さて、善光寺が見えてきた」
マ「善光寺って、長野県のお寺じゃないんですか」
梓「こっちは、信玄公が開いた善光寺。だから信州と区別するために『甲斐善光寺』だとか『甲州善光寺』だとか呼ばれる」
マ「長野県の本家本元に比べても見劣りしない、立派な建物ですねえ」
梓「この信州の善光寺には善光寺如来という阿弥陀如来像があるんだけど、実は、川中島の合戦のときに焼失するのを恐れた信玄公が甲斐善光寺へ移されてしまった経緯がある」
マ「あらまあ。それじゃあいまも、甲斐善光寺にその如来さまがいるんですか」
梓「ところが、その善光寺如来も武田家滅亡とともに、織田家の岐阜善光寺へと移されてしまうんだ」
マ「なんと」
梓「しかし、本能寺の変のあと、甲州が徳川の配下となったときには、再び甲斐善光寺へ。そのあとの慶長伏見地震で京都の方広寺の大仏が倒壊すると、大仏の代わりとして京都へ。すったもんだの末、信州の善光寺へと帰ったらしい」
マ「さんざん回遊したものの、もとの場所へ戻れたんですねえ。よかったよかった」
信玄公ゆかりのお寺、恵林寺
梓「さて、恵林寺にやってきた。ここは信玄公の菩提寺だ。信玄公が生前のときから深く帰依していた場所でもある」
マ「山門になにか書いていますね」
マ「あ、ここにも同じ文字が」
梓「心頭滅却すれば火もおのずと涼し」
マ「あ、聞いたことが」
梓「恵林寺の僧侶、快川紹喜の言葉だ」
マ「え、ええと、その」
梓「僧侶の名前は『かいせんじょうき』」
マ「ああ、なにも言わなくても読んでくれた、はってはて♪」
梓「織田家が甲斐に侵攻して武田家が滅亡するときに恵林寺も焼かれるんだけど、『心頭滅却』は、そのときに快川紹喜が遺した辞世の言葉だ、と言われている」
マ「は、はてはて。そんな焼かれているときの言葉だとは知らなかったです、こわい」
梓「境内には自然も多く、夏でもそれこそ涼やかだよ」
マ「静かな時間が流れていますねえ」
武田氏代々が祀る地 武田八幡宮
梓「さて、最後は武田八幡宮。甲府市内から少し離れて韮崎までやってきた」
マ「あたりにだれもいませんねえ」
梓「街中から離れた丘のうえだからね。ここは武田氏が代々崇敬してきた八幡宮だ」
マ「最初に行った武田神社とは違うんですか」
梓「武田神社は、信玄公を祭神として大正時代に建てられた神社。あくまで信玄公のみを祀っている」
マ「建てられたのもつい最近のことなんですねえ」
梓「一方武田八幡宮は、ずっと昔の9世紀に建てられたと伝えられている。この武田八幡宮が武田の地、ひいては武田氏の姓の由来ともなっていったんだ」
マ「うっそうとした山のなかに社殿があるんですね」
梓「かつての日本の神社の姿、というものが思われるね」
マ「あ、武田菱だ」
マ「小高い丘のうえから、山梨の夏が望めますねえ」
梓「かつて信玄公もこうして、同じ甲府の地を眺めたのかもしれないね」
基本情報のまとめ
武田神社
≫http://www.takedajinja.or.jp/
〒400-0014 山梨県甲府市古府中町2611
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TEL:055-252-2609
臨済宗妙心寺派 瑞巌山円光院
≫http://www16.plala.or.jp/enkoin/
〒400-0013 山梨県甲府市岩窪町500
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TEL:055-253-8144
甲斐 善光寺
≫http://www.kai-zenkoji.or.jp/
〒400-0806 山梨県甲府市善光寺3丁目36−1
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TEL:055-233-7570
乾徳山 恵林寺
〒404-0053 山梨県甲州市塩山小屋敷2280
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TEL:0553-33-3011
武田八幡宮
≫https://www.takedahachimanguu.com/
〒407-0042 山梨県韮崎市神山町北宮地1185
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≫筆者:連理梓
≫来訪日:2015.07.29
※「はてはてマンボウのブログ」は移転しました。