こんにちは、はてはてマンボウです。今回は京都市北西部を回遊しています。
梓「今回は仁和寺を尋ねてみよう」
マ「さっそく読み方が」
梓「にんなじ、だよ」
世界遺産・仁和寺ってどんなお寺?
梓「仁和寺は、『古都京都の文化遺産』の1つとして世界遺産に登録されている。真言宗の御室(おむろ)派の総本山だ」
マ「おむろ、はて」
梓「仁和寺は、平安時代、宇多天皇によって建てられた。その宇多天皇が譲位をしたのち、出家をして自分のための一室を仁和寺に設けた。これが御室と呼ばれた」
マ「平安時代の天皇のエピソードにちなんだ名前だったんですね」
梓「この『御室』はこのあたりの地名にもなっているね。さてマンボウちゃん、平安時代初めに空海が始めた仏教の宗派、覚えてるかな」
マ「ええと、たしか、真言宗です。東寺が空海のお寺でしたよね」
《世界遺産》五重塔だけじゃない!╿京都市の東寺、あるいは教王護国寺
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梓「その東寺のお坊さんを仰いで、宇多上皇は出家した。この縁もあって、真言宗を掲げることとなり今に至る、というわけだ」
境内をぐるっと回ってみよう!
梓「さて、仁王門を通って境内に入ると、まずは長い道をまっすぐ歩くことになる」
梓「京都の多くの文化財に漏れず、応仁の乱を免れず仁和寺も一時期は衰退した。それが復興されたのは江戸時代になってから。この金堂も同時代の国宝だ」
マ「うわあ、立派な五重塔」
マ「庭の向こうからでもよく目立ちますねえ」
梓「こっちからは仁王門と勅使門が見えるね」
マ「仁王門と……」
梓「ちょくしもん。朝廷からの使いを勅使という。これを受け入れるための門が、勅使門」
マ「専用ゲートがあるんですねえ」
観音像の仏たち
梓「さて、そんな仁和寺の観音堂の仏像が、2018年、九州国立博物館で展示されていた」
梓「観音堂の内部は普段は非公開なんだけど、九州国立博物館での修理に際して、仏像が公開されることになった」
マ「貴重な展示の機会だったんですね」
梓「観音堂だけあって、中央は千手観音。しかしその脇侍が不動明王と降三世明王、という珍しい構成だ。そこへ、東西南北の四天王がそれぞれ、右手前、左奥、左手前、右奥の順に並んでいる」
マ「ま、まぼまぼ。呪文が連続します」
梓「おおっと、失礼。マンボウちゃんには、明王と天の話をしたほうがよさそうだね」
憤怒の表情・明王
梓「明王とは、密教特有の仏さま。如来の化身として、仏教に従わない人間たちを無理やりにでも従わせようとする。特に、不動明王を中心とした五大明王はしばしばセットで見られる。東寺にも立体曼荼羅として並べられているね」
マ「やさしい表情の如来や菩薩とは大違いですねえ、はて」
梓「仏教を信じずに不幸せな道を進むよりは、強制的でも仏教を信じるようにさせた方が幸せだ、という発想からきている。ちなみに明王の『明』とは、密教における真実をもたらす言葉『明呪』を意味する」
梓「さて、これは私がもっとも好きな仏像、降三世(ごうざんぜ)明王だ」
マ「不思議な名前ですねえ。読めないし」
梓「降三世明王は三面六臂、すなわち顔が3つに腕が8つの明王だ。さて、降三世明王が何かを踏んでいるのがわかるかな」
マ「あ、2人、踏みつけられています」
梓「大自在天(だいじざいてん)と烏摩妃(うまひ)という。それぞれ、ヒンドゥー神話のシヴァ神とその妻であるパールバティをモデルとしている」
マ「シヴァ神って、インドの有名な神様ですよね」
梓「シヴァ神、すなわち大自在天はこの世すべてを表す『三千世界』の王であると称した。この三千世界の王を降伏させたとされることから、降三世明王と呼ばれる」
梓「仏像にはそれぞれ固有の手のポーズがあって、これを印相と呼ぶ。左右の小指を絡ませた上で、両手の人差し指を立てるこの独特な印相は『降三世印』だ」
ヒンドゥー神話の神々を取り入れた「天部」
梓「天、あるいは天部とは、もともとはヒンドゥー教の神々だったものだ。それを、仏教を守護する神として取りいれたもので、如来、菩薩、明王の下に位置づけられている。仏教界の、いわばボディーガードだ、なんてしばしばたとえられるね」
マ「この人たち、ヒンドゥー教に由来する神様ばっかりなんですね! はてはて」
梓「ここにいる二十八部衆は、千手観音の眷属として並べられている」
梓「たとえば、この迦楼羅(かるら)。鳥の王なんだけど、由来になったのは古代インド神話の霊長・ガルーダだ。ちなみにガルーダは『ガルーダ航空』として、インドの飛行機会社の象徴ともなっている」
梓「阿修羅は、古代インドではアスラと呼ばれる戦いの神だった。仏教では、釈迦の説法により仏道へ強化されたということになっている」
マ「さっきの明王のときもそうでしたけど、なんだか仏教側に都合のいい展開が多いような」
梓「仏教はもともと個人の救済を目的としたものだったけれど、これが次第に『大衆を救う』という目的である大乗仏教へと変化する。そうすると、仏教を大衆に広めていくためには、古代からのインド土着の神々がどうしても邪魔だ。人気があるからね」
マ「たしかに」
梓「これを仏教が乗り越えるためにはどうすればいいか。インドの神々を、仏教の体系の中に取り入れればいいと気づいたわけだ」
マ「なるほど」
梓「仏教を守らせるボディーガードとして取り入れられた天部は、如来、菩薩や明王よりも下に位置させる。またあるときは、明王に降伏させるなどすることで、ヒンドゥー神話の神々が本来持っていた力を、仏教の世界観の中で征服しようとしたのがわかる」
マ「仏教って、とんでもない発明をしたんですねえ。度が過ぎた悪いものみたいに感じられます」
梓「そうでもないよ。翻って、ヒンドゥー教を見てみると、こっちはこっちで、釈迦を多くの神々のうちの1人だとカウントしているからね。ヒンドゥー教はヒンドゥー教で、仏教の開祖をその他大勢のうちの一と見なしたわけだ」
マ「どっちもどっちですねえ」
梓「俗世の人々の要望にあわせて、柔軟に変化した結果だともいえる。より多くの人たちを救おうとしたその懐の深さが、多くの神々を生んだわけだ」
【特集】仏の世界の四階層╿如来・菩薩・明王・天
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基本情報のまとめ
☆仁和寺 ≫公式HP
〒616-8092 京都府京都市右京区御室大内33
≫筆者:連理梓
≫来訪日:2012.05.22(仁和寺)、2018.08.05(九州国立博物館)