《解説》5分でわかる! 西洋絵画の美術史

こんにちは、はてはてマンボウです。今回は連理梓さんをお呼びしています。

梓「マンボウちゃん、急に呼び出してどうしたの」

マ「一言でいいんです!

梓「うわ、びっくりした。君も大声を出すんだね」

マ「西洋美術の世界って、いろんな単語があってよくわからないんです」

梓「まとめページがあるだろう」

《まとめ》大塚国際美術館で見る美術史
↑美術史をトピックスごとに見てみたい方はこちらをクリックしてくれ~まあんぼう~

マ「まとめページを読むまえに、マンボウみたいな初心者でもわかるように、美術史のトピックスを、それぞれ一言で紹介してください」

梓「そりゃ、ずいぶんと難しいお願いだな」

マ「ざっくりまとめられてないと、マンボウ、もう美術の世界を回遊しませんよ」

梓「しょうがないなあ。それじゃあ、例外は無視して、主要な流れだけを見てみよう」

梓「ざっくり見ると、こんな感じの流れだ」

マ「うわあ、ざっくり」

梓「それじゃあ各時代を一言でまとめていくよ」

理想の美の世界が生まれた! ギリシャ・ローマ文化の古代

『ラオコーン』 / ヴァチカン美術館(ローマ)

梓「神話の世界が激しく動く!」

マ「ひょええ、びっくりした、ふがふが」

梓「紀元前数千年前から5世紀くらいまで。ギリシャ・ローマ神話の世界が、複雑な人体表現で表される、それが古代ギリシャ・ローマ世界」

マ「ギリシャ・ローマって、絵画よりも彫刻のイメージですねえ」

梓「この複雑な彫刻の数々が、1,500年後のルネサンスぐらいには理想とされる」

マ「あれ、なんか含みがあるような。じゃあ、そのルネサンスまでは」

梓「それまでは消えてる」

マ「え、しばらく出てこないんですか、この人たち」

うつろな目をしたキリスト教世界……近寄りがたいロマネスク

『栄光のキリスト』 / カタルーニャ美術館(バルセロナ)

梓「ヘタウマ絵画!」

マ「ひょええ、また大きな声、ふがふが」

梓「ざっと10-12世紀。ギリシャ・ローマの世界にとって代わって、キリスト教の世界をヘタウマ絵画で描いたのがロマネスク」

マ「なぜ、ヘタウマで」

梓「神の世界は人間らしくないほうがいい。そういうわけで、俗世から離れている感じが、画一的に描かれた」

人間らしさが垣間見える╿ルネサンスにつながる、ゴシック美術

シモーネ・マルティーニ『受胎告知』 / ウフィツィ美術館(フィレンツェ)※画像は大塚国際美術館の展示品

梓「横向きの人、S字の人!」

マ「だんだん、この大声にも慣れてきました」

梓「ざっと12世紀から14世紀がゴシック美術。真正面を向いてシンメトリーに描かれていた人々が、横向きで身体をひねるようになる」

マ「人間らしくなってきたことで、親しみやすくなってきました」

梓「ちなみに、この辺で作者の名前が出てくるようになってくる」

マ「あ、ほんとだ」

ギリシャ・ローマの「復興」ルネサンス

レオナルド・ダ・ヴィンチ『レダと白鳥』

梓「ギリシャ・ローマの神話と技術の『復興』!

マ「復興って言葉、好きですね、連理梓さん」

梓「ルネサンス自体が『復興』っていう意味だからね。15世紀に、ギリシャ・ローマの文化を復興させようとした」

マ「具体的には、何が復興したんですか」

梓「まず、主題。キリスト教の世界しか許されていなかったのに、ギリシャ・ローマ神話も描かれるようになる」

マ「あ、1,500年ぶり」

梓「あとは技術。彫刻の写実性が絵画にもいかされている。より人間らしい絵画になった」

マ「たしかに。ロマネスクはもちろん、ゴシックともぜんぜん違います」

梓「代表的な画家は、いわゆる『三巨匠』。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ・ブオナルローティ、ラファエロ・サンツィ」

ルネサンスの成れの果て!? マンネリズムのマニエリスム

ブロンズィーノ『愛のアレゴリー」 / ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

梓「やりすぎルネサンス!」

マ「マニエリスムってルネサンスからつながっているんですか」

梓「ルネサンスで絵画の技術が劇的に進化した。ギリシャ・ローマの世界よりも、ルネサンスで進化した技術そのものをより誇張するようになったのが、後期ルネサンスであるマニエリスム。ざっと16世紀前半」

マ「どういうところがやりすぎなんですか」

梓「まず、技法。身体の動きが不自然になる。あとは主題。絵画のテーマがやりすぎのせいで、ちょっと何言ってんのかわからない」

『いびつな真珠』はドラマチック! バロック美術

カラヴァッジョ『キリストの埋葬』 / ヴァチカン美術館(ローマ)

梓「人目を引いて対抗宗教改革!」

マ「対抗宗教改革? 宗教改革なら聞いたことありますけど」

梓「バロック美術は17世紀。16世紀に起きた宗教改革で新興勢力のプロテスタントが勢力を増すなか、旧勢力のカトリックも巻き返しを図ろうとした」

マ「それで生まれたのがバロックですか。ちなみに、バロックってどういう意味なんですか」

梓「いびつな真珠。もともとは、『均整のとれていたルネサンス時代に比べて、表現が劇的になりすぎて違和感がある』という批判だったらしい」

マ「へえ、激しい動きと強烈な光と闇のコントラストが、こんなにキャッチ―なのに」

梓「とにかく人目を引くドラマチックなバロック美術は、特にイタリアやスペイン、フランスといったカトリック世界で好まれた」

優雅で退廃的なロココ美術

フラゴナール『ぶらんこ』 / ウォレス・コレクション(ロンドン)

梓「いかにも、おフランス!」

マ「たしかに。優雅なおフランスって感じがするザマスねえ」

梓「マンボウ、語尾に影響が」

マ「は、つい」

梓「18世紀のロココ美術には、明るくてかるーい感じ。フランスの宮廷世界の雰囲気が漂う」

真実はいつも古典!╿新古典主義

ダヴィッド『ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠』ルーヴル美術館(パリ)

梓「古典の世界をもう一度!」

マ「ロココからずいぶんと変わりましたねえ」

梓「18世紀から19世紀初頭の新古典主義は、ロココからの反動。明るい色彩で軽く華やかで自由奔放だったロココから、デッサン重視でお堅い雰囲気になる」

マ「この古典っていうのは、ギリシャ・ローマのことですか」

梓「そういうことだ。と同時に、ギリシャ・ローマを理想としたルネサンス時代の絵画も意識されている。ラファエロとかね」

古典よりも感覚重視! ロマン主義

ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』 / ルーヴル美術館(パリ)

梓「自由な主題でドラマチックに!」

マ「はて、ドラマチック。聞いたことのあるような」

梓「人目を引くために、明暗のあるドラマチックな絵を描いたのは」

マ「あ、バロックです」

梓「でも、17世紀のバロック美術が人目を引きたかったのは、カトリックの信徒獲得の需要があったからだ。19世紀のロマン主義ともなると、主題は自由になってくる。新古典主義が古典ばかり重要視するから、多様な美が尊重された」

マ「なんだか、前の様式の反動につぐ反動、といった感じですねえ」

日常的な風景をリアルに描く╿写実主義

ミレー『落ち穂拾い』 / オルセー美術館(パリ)

梓「空想のロマンよりも日常のリアルを!」

マ「またまた前の様式への反動ですか。たしかに、日常の農民の生活に密着って感じですよねえ」

梓「ロマン主義の直後、19世紀半ばの潮流が写実主義だ。新古典主義だとかロマン主義だとかは、歴史的なモチーフを描いている。西洋絵画の世界では、キリスト教やギリシャ・ローマといった歴史画というのが伝統的に評価されてきた」

マ「素朴な日常な絵画で、伝統を破壊したんですねえ」

マダムは大好き印象派! でも、ちょっとその位置は近すぎるんじゃ……

 

モネ『印象、日の出』 / マルモッタン美術館(パリ)

梓「光を表す印象派!」

マ「光を表す、はて。なんとなくぼやっとした優雅な絵が印象派なんじゃ」

梓「19世紀後半の印象派では、日常生活の中の光の感覚を表すために、ぼやっと描いている。ちゃんと遠くから見たかい」

マ「遠くから、はて」

梓「印象派では、原色を並べて描いている。これを遠くから見ると、色があわさって新たな1色が生まれるんだ。なので、遠くから見ないと意味がない」

形のないものを形に表す試み、象徴主義の世界

クリムト『接吻』 / オーストリア・ギャラリー

梓「不安や苦悩、神話や文学の象徴」

マ「これまでに比べると、ずいぶんと自由気ままな描き方ですね。なんだかもう、様式、と言えるものもないような」

梓「印象派と同じく19世紀後半に出てきたのが象徴主義だ。印象派もそうだけど、既存の描き方にとらわれない様式だね」

マ「象徴主義っていうことは、なにかを象徴しているんですか」

梓「目の前の世界ではなく、心象世界を表そうとしたものが多い」

そして現代へ

ピカソ『ゲルニカ』 / ソフィア王妃芸術センター※画像は大塚国際美術館のもの

梓「奔放になった絵画は、20世紀以降、その様式のバリエーションにおいて留まることを知らない」

マ「型にはめるのも難しいですよねえ」

梓「というわけで、19世紀までの絵画をざっと概観してみた」

マ「マンボウも少し賢くなった気がします。美術展に行くときなんかには、参考になりそうですね、はってはて♪」

《ページ内リンク》
☆大塚国際美術館 概説「丸1日楽しめる世界の絵画╿徳島県 鳴門市の大塚国際美術館」

美術史 各時代解説

・古代
・中世
・ルネサンス
・バロック
・ロココ
・新古典主義とロマン主義
・写実主義
・印象派
・象徴主義

 

≫筆者:連理梓

参考文献
〇大塚国際美術館・NHK文化センター・有光出版株式会社(1998)『西洋絵画300選』(有光出版)
〇城一夫(2012)『常識として知っておきたい「美」の概念60』(パイ インターナショナル)
〇早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
〇早坂優子(1996)『巨匠に教わる絵画の見かた』(視覚デザイン研究所)

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