こんにちは、はてはてマンボウです。前回は、中世の西洋絵画の世界について教えてもらいました。今回は一つ時代が進んだルネサンスについて教えてもらえるみたいですよ~。
《解説》ヘタウマ絵画も意味がある!╿絵画を語るとき我々の語ること②中世
↑「中世の世界っていったいなんだ?」という方は、こちらの記事もチェックしてくれ~。まあんぼう~
梓「さあ、いよいよルネサンスの世界にやってきたね」
マ「あ、連理梓さん。マンボウもルネサンスって言葉ぐらいは知ってますよ」
梓「これまでは古代、中世と時代で区切ってきたけれど、ここからは美術様式で区切っていくよ」
マ「さて、今回のキーワードはなんですか」
梓「復興!」
マ「いつもの大きな声ですね、ふがふが」
梓「今回の美術史では、西洋絵画の理想とされた時代、ルネサンスについて話していこう。
ルネサンスはざっと以下の3つの時代に分けて説明できる」
①初期ルネサンス(15世紀):古典古代の復興
②盛期ルネサンス(16世紀前半):三巨匠の時代
③後期ルネサンス(16世紀):マニエリスム
梓「さて、今回も大塚国際館の絵画を使って解説するよ」
「ルネサンス」ってそもそもなに?
梓「ルネサンス、ゴシックと中世のときに描かれたテーマはなんだったかな」
マ「キリスト教です」
梓「中世のまえは」
マ「古代のギリシャ・ローマ世界でした」
梓「つまり西ローマ帝国の滅亡以降、中世世界ではギリシャ・ローマ神話が絵画の主題として取り入れられることはなかった」
マ「たしかに」
梓「絵画とはあくまで、キリスト教世界を表現するための道具だった。『文盲のための聖書』といった側面があったわけだ。絵画を通して、信徒にキリスト教の世界を体験させることができればそれでよかった」
梓「ルネサンスとはフランス語で『復興』を表す」
マ「だから、復興復興と叫んでいたんですね。それじゃあ、では復活したその対象は」
梓「『ギリシャ・ローマ文化』の復興だ。芸術世界のあるべき姿を表す古典が、ギリシャ・ローマ文化だった」
マ「でも、キリスト教って一神教なんでしょう。多神教のギリシャ・ローマ世界を描いてよかったんですか」
梓「中世までは教会に請われて描かれてばかりだった。しかし、世俗の裕福な市民をパトロンに持つようになると、教養としてのギリシャ・ローマ文化が絵画のなかに再現されるようになる」
よみがえったギリシャ・ローマ╿初期ルネサンス
梓「こちらは、ボッティチェリの『春』。詳細な説明は省くけど、ギリシャ神話の神々やニンフが描かれている」
マ「いろんなところで目にする絵画ですよねえ」
梓「ボッティチェリは、キリスト教世界でギリシャ・ローマ世界を題材として復活させた最初の人間の1人と考えられている」
理想の芸術そのものへ╿三巨匠の盛期ルネサンス
梓「盛期ルネサンスを彩るのは、フィレンツェで活躍した三人の天才だ。まず第一はレオナルド・ダ・ヴィンチ」
マ「ダ・ヴィンチって名前はとても有名ですけど、なにがすごいんですか」
梓「2つの大きな技法を使いこなした。1つ目は遠近図法。『最後の晩餐』の柱や天井の格子をたどると、自然とイエスの頭部あたりに視線が集まるようになっている」
マ「ほんとうだ。画面に統一感があるような」
梓「もう1つがスフマート。重ね塗りを繰りかえすことで、輪郭が柔らかくぼかされた絵ができあがる」
マ「背景から人間が浮きあがってくるように見えますねえ」
梓「さて、2人めは『神のごとき』とうたわれた、ミケランジェロだ」
マ「筋肉ムキムキですねえ」
梓「ミケランジェロはもともと彫刻家なんだ。ギリシャ・ローマの彫刻に感銘を受けたミケランジェロは、絵画にも不自然ともいえる身体のひねりや筋肉表現を取り入れる」
梓「こちらは『聖家族』。マリアさまの身体表現に注目」
マ「うしろへ身体をひねりすぎて、腰を悪くしそうです。二の腕の筋肉もすごおい」
梓「三巨匠最後の1人が、ラファエロだ」
マ「ミケランジェロの聖母と違って、柔らかい感じがありますねえ」
梓「ラファエロは、聖母の画家とも言われたぐらい、美しい聖母をたくさん描いている。ラファエロは、柔らかい絵も描ける一方で、ミケランジェロのような力強い人体表現もできた。後世にいたるしばらくのあいだ、美術の理想とされてきたんだ」
マ「しかし、こんなに才能のある3人が、ほぼ同じ時代に同じ地域で活躍していたとは」
梓「三巨匠の芸術があまりにすぐれているために、彼らの超絶技巧こそが完璧な芸術であると見なされるようになる。これまでは古典世界を絶対的な美の基準としていたはずが、ルネサンスの三巨匠こそが新たな理想とされるようになるんだ」
フィレンツェの三巨匠だけじゃない! ヴェネツィア、そして北方ルネサンス
梓「三巨匠がおもに活躍したのはフィレンツェだが、海港都市として繁栄を極めた『アドリア海の女王』ことヴェネツィアでもルネサンスの大きな動きがあった」
マ「ゴンドラの街ですね、はってはて♪ かっこいい二つ名を持っていたんですねえ」
梓「このヴェネツィアで隆盛したのが『ウルビーノのヴィーナス』に代表されるティツィアーノをはじめとした、ヴェネツィア派だ。世俗の市民たちがより力を持っていたヴェネツィアでは、より世俗的な絵画が好まれ、官能的な表現が多く描かれた」
マ「ヴェネツィア派もルネサンスの1つなんですか」
梓「そう考えてもらってさしつかえない」
梓「一方で、ドイツやフランドル地方を中心とした地域でも、いわゆる北方ルネサンスが起きた。ヤン・ファン・エイクの『アルノルフィーニ負債の肖像』の精密表現は北方ルネサンスの代表的な絵画として知られている」
マ「フランドル地方ってどこなんですか」
梓「フランドル地方は、現在のオランダ南部、ベルギー、フランス北部一帯の地域を指す。ここでも商業が栄えたことにより生まれた裕福な市民がパトロンとなった」
梓「ブリューゲルの『バベルの塔』も、フランドル地方の作品。北方ルネサンスでは、緻密な表現や、さまざまな寓意を含む小物が描かれた絵が特徴的だ」
マ「たしかに、大きなバベルの塔のさまざまな箇所に、こまごまと人が描かれていますねえ」
マンネリズムがマニエリスム?
梓「さて、マニエリスムの本流に戻ろう。システィーナ・ホールで描かれているミケランジェロの『最後の審判』も、ルネサンスを代表する絵画だ」
マ「最後の審判ということは、中心にいるのはイエスでしょうか。筋肉ムキムキ、マッチョマン」
梓「ミケランジェロの本業が彫刻家であったことに加えて、ルネサンス期には解剖学の研究も進み、人間の身体の動きに対する理解が深まったことからこのような表現が可能となった。一方で、心情をドラマチックに表現しようとするあまり、その肉体の構成や動きにしばしば誇張が見られるようになった。のちのマニエリスムにつながる潮流だ」
マ「マニエリスム、はて」
梓「マニエリスムは、16世紀半ばから17世紀はじめにかけての、ルネサンスの後期、最終段階の状況の潮流を指す言葉だ」
マ「一応、ルネサンスの流れにはあるんですねえ」
梓「巨匠たちが描いてきた様式を『マニエラ』と呼ぶ。英語の『マナー』の語源だ。このマニエラを基準として、その技術を反復し、誇張を繰りかえしていく」
マ「すると、表現が極端になっていくということでしょうか」
梓「そのとおり。様式のセルフパロディを繰りかえした結果、表現がどんどん誇張されていくというのは、現代の芸術や娯楽作品にも見られるね」
マ「この絵も、マニエリスムの絵画ということですね」
梓「パルミジャニーノの描いた『首の長い聖母』だ」
マ「たしかに、その名のとおり、聖母の首が不自然に長いです」
梓「古典世界や自然から学ぶことがなくなったがゆえの行き過ぎた非現実的な表現が、マニエリスムの特徴だ」
マ「これが『マンネリズム』の語源となったというわけですかあ、勉強になります」
梓「もっとも、パルミジャニーノの描く陶器のような肌を持つ聖母、私は好きだけどね。胸元に添えられたたおやかな手の表現なんて、一昔前の初期ルネサンスでは考えられなかったと思わないかい」
梓「宮廷世界のインテリたちが、その教養を満足させるための道具としても、マニエリスムの絵画は気に入られた。これはブロンズィーノの『愛のアレゴリー』という作品」
マ「なにが描かれているんですか」
梓「わからない」
マ「は、はて!」
梓「アレゴリーとは『寓意』という意味。それぞれの人物や、人物の持っているもの、あるいは絵画そのものがなにかを表しているんだけど、その解釈でいまだに揺れているところもある、ということだ。それだけ、描かれているものの解釈が難解なんだよ」
梓「これは『聖アンデレと聖フランチェスコ』。長く引き伸ばされたプロポーションと独特のゆがみ、そしてヴェネツィア派のタッチを彷彿とさせる、エル・グレコの作品だ」
マ「たしかに、縦長の絵ですねえ。この人たち、いったい何頭身なんでしょう、はて」
梓「さて、それではルネサンスから次の時代、バロックへと進もう」
この記事のまとめ
梓「今回は次の3つのことを覚えておくといい」
①ルネサンスでは、ギリシャ・ローマ文化がよみがえり、人間らしい表現に加えて、ギリシャ・ローマ神話が絵画のの題材に選ばれるようになった。
②三巨匠はさまざまな技法を極めたが、一方でこれはマンネリなマニエリスムにもつながった。
③フィレンツェでのルネサンスに加えて、ヴェネツィアや北方でもルネサンスの動きがあった」
マ「それならマンボウでも覚えられます、はってはて♪」
《ページ内リンク》
☆大塚国際美術館 概説「丸1日楽しめる世界の絵画╿徳島県 鳴門市の大塚国際美術館」
☆美術史 解説
・古代
・中世
・ルネサンス
・バロック
・ロココ
・新古典主義とロマン主義
・写実主義
・印象派
・象徴主義
≫筆者:連理梓
※「はてはてマンボウのブログ」は移転しました。
はてはてマンボウの 教養回遊記 (hatehatemanbou.com)
参考文献
〇大塚国際美術館・NHK文化センター・有光出版株式会社(1998)『西洋絵画300選』(有光出版)
〇城一夫(2012)『常識として知っておきたい「美」の概念60』(パイ インターナショナル)
〇早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
〇早坂優子(1996)『巨匠に教わる絵画の見かた』(視覚デザイン研究所)