《解説》ヘタウマ絵画も意味がある!╿絵画を語るとき我々の語ること②中世

こんにちは、はてはてマンボウです。前回は、古代の西洋絵画の世界について教えてもらいました。今回は一つ時代が進んだ中世について教えてもらえるみたいですよ~。

《解説》西洋絵画はローマに通ず╿絵画を語るとき我々の語ること①古代
↑「古代の世界っていったいなんだ?」という方は、こちらの記事もチェックしてくれ~。まあんぼう~

梓「マンボウちゃん、次は中世の世界だ」

マ「あ、連理梓さん。前回はギリシャ・ローマの世界を教えてもらいましたけど、今回はなにかキーワードがあるんですか」

梓「キリスト教!

マ「うわあ、また急に大きな声を」

梓「今回の美術史では、ギリシャ・ローマに並ぶ西洋絵画のもう一つのルーツ、キリスト教を中心に話していこう。中世にはの2つの絵画様式が出てくる」

①ロマネスク

②ゴシック

梓「これらは、どちらもキリスト教を軸としながら、実に対照的な様式なんだ。さて、今回も大塚国際館の絵画を使って解説するよ」

「中世」っていつからいつまで?

梓「いろいろな定義があるけれど『大塚国際美術館 図録300選』によると、ざっと4世紀から、15世紀中ごろまでを指す」

マ「理由があるんですか」

梓「うむ。これは『ローマ帝国』の興亡の記録と結びついている」

マ「ローマ帝国といえば、ギリシャ世界の文化を受け継いだんでしたよねえ。ギリシャ神話の神々を信仰してました」

梓「ところが、ローマ帝国内で新興宗教が生まれ、勢力を伸ばす。キリスト教だ。ギリシャ神話にはたくさんの神々がいる多神教だった。キリスト教は?」

マ「一神教っていいますよね。あれれ、多神教とは違う考え方のような」

梓「ローマでも、最初は土着のローマ神話が信仰されていて、キリスト教は迫害される。だけど、300年のときをかけて信者を増やしていき、帝国内でも無視されないほどの勢力となっていくんだ」

マ「ローマ帝国のなかにキリスト教の信者が増えていくんですねえ」

梓「313年に『キリスト教を信仰してもいいよ』というミラノ勅令が出されるのが4世紀はじめ。こうするともう、キリスト教の勢いは止められない」

マ「タガが外れちゃったんですね」

梓「やがて392年、ローマ帝国唯一の教えとされる」

マ「激動の4世紀ですねえ。でも、連理梓さんは、年号をよく覚えてますねえr」

梓「313年、再三頼んだミラノ勅令。392年、キリスト教が御国の教えに」

マ「語呂合わせでしたか」

梓「このローマ帝国もやがて東西に分裂する。西側のローマ帝国滅亡は、ローマ帝国死なんとす、476年。さて一方で、東ローマ帝国の滅亡はというと1453年。東ローマ帝国が滅ぶことで中世の世界にも終わりが告げられる」

マ「語呂合わせは?」

梓「古代ローマの意志ごみになる東ローマ滅亡、1453年」

マ「は、はて……」

千年帝国 東ローマ

梓「ギリシャを拠点とした東ローマ帝国は都市『ビザンティウム』を帝都としたので、ビザンティン帝国、ビザンツ帝国とも呼ばれるようになる。さて、ここに載せたのはビザンツ皇帝・ユスティニアヌス帝が描かれたイコンだ」

マ「はて、イコンとは」

梓「礼拝に使う聖人の絵のこと。『アイコン』と同じ語源」

梓「ローマ帝国の分裂に合わせてキリスト教も西と東で分裂する。西洋世界はローマを中心としたいわゆるカトリック、東方世界はコンスタンティノープルを中心とした東方正教会」

マ「キリスト教にもいろいろな派閥があるのねえ」

梓「東方教会において、イコンは神の世界を覗くための『窓』とされた。イコンの絵を通して、そこに描かれたものやそこから広がる世界を感じようとしたんだね」

マ「みんな真正面を向いているんですねえ。それに、なんだか同じような顔」

梓「いいところに目をつけたね、マンボウちゃん。ビザンティン様式は形式ばった没個性

マ「まぼ? なんだかわからんけど、褒められた。はってはて♪」

梓「なぜみんな同じような顔なのかは次のロマネスクの世界で解説しよう」

個性はいらない!╿ヘタウマ絵画のロマネスク

梓「さて、中世を代表する1つめの様式は、この『栄光のキリスト』に代表されるロマネスク美術だ。教会10世紀後半から始まる流れだね」

マ「あれ。古代美術から、ずいぶん間が空いてしまったような」

梓「西ローマ帝国が5世紀に滅亡して以来、西側のヨーロッパ世界では系統だった文化がなかなか醸成されてこなかった。これが、神聖ローマ帝国が誕生したあたりで流れは変わる」

マ「神聖ローマ帝国、はてなんだか仰々しい名前ねえ」

梓「詳しい説明は省くけど、ローマ帝国の後継者を自負する帝国ができたってこと。962年、苦労人の神聖ローマ」

マ「それで、ローマ風だからロマネスクってことなんですか」

梓「確かに語源はそのとおり。だけど、建築や美術がそれほど、古代ローマ時代らしさを持っているわけではない。実際のところ、由来の理由はよくわかっていないんだ」

マ「まぼ?」

梓「ただ、神聖ローマ帝国ができたぐらいで、西ヨーロッパ世界にはキリスト教もほぼいきわたる。各地に修道院ができる。キリスト教が広がったことで、広範な地域に似たような様式の文化が芽生えた」

マ「ロマネスク美術そのものは、いわゆるヘタウマみたいな感じですねえ」

梓「自然で写実的な描写というのに、ロマネスク美術はあまり関心を持っていない」

マ「はて、どうしてでしょう」

梓「ビザンティン様式を思い出してほしい」

マ「みんな同じ顔の没個性」

梓「俗世を超越した観念的な神の世界に、親しみやすさはいらない。個性を表す感情表現はむしろ排除されたほうが、むしろ威厳が出る」

マ「ロマネスクはある意味個性的な表現にも見えますけど、たしかにどの絵からも感情は感じられないですねえ」

梓「とっつきにくい近づきがたさはそのまま威厳を生むんだ。その意味では、ロマネスクはビザンティン様式の影響を受けている時代とも言える」

ルネサンスの萌芽╿ゴシック美術

梓「さて、次は中世を代表する2つめの様式、ゴシック美術へと移ろう。ゴシックは12世紀中ごろからの美術だ」

梓「これはシモーネ・マルティーニの『受胎告知』」

マ「なんだか必殺技みたいな名前の人ねえ」

梓「このシーンでは、純潔のまま子を身ごもったことを告げられて驚くマリアが身をよじらせているのがわかる。さて、ロマネスクからなにか変化はあるだろうか」

マ「ロマネスクまでは、かたーいイメージだったんですけど。ゴシックではなんだか動きがあるような」

梓「S字に身体をひねっているよね。正面を向く左右対称の構図だったのが、身体に動きが出ることで、人体表現に優美さが生まれた」

梓「ロマネスクまでは感覚の世界を超越したような表情だったはずが、ゴシックでは積極的に表情を見せている」

梓「こちらは、ジョットのスクロヴェーニ礼拝堂の絵画のうちの一つ。死んだはずのラザロという男に、イエスが『起きてきなさい』と伝えると、ラザロがよみがえったという聖書の1シーン。描かれている人たちが感情をあらわにしているよね」

マ「そりゃまた劇的なシーンですねえ。人が感情を表すのにぴったり」

梓「こうして、絵画に生まれてきた人間らしさがいよいよ花開くのが、次のルネサンスの時代だ。ジョットの絵画は、ゴシック時代でありながら、ルネサンスの時代への橋渡し的存在でもあることから、プレ・ルネサンスとも呼ばれている。ちなみに、絵の作者の名前が出てきたのは今回が初めてだ」

マ「はて! たしかに」

梓「人間中心の考え方が生まれ、絵画にも人間らしさが導入されてきた。と同時に、絵画の作者その人にも同様に焦点があてられるようになった」

マ「は、連理梓さん。あたしゃ、もう1つの事実にふと気づいてしまったのですが」

マ「古代であれほど出てきたギリシャ・ローマの絵画が、中世の絵画では出てきませんでした」

梓「いい指摘だ。マンボウの言うとおり、キリスト教が広まることで、異教となってしまったギリシャ・ローマ神話は題材として消えてしまったかに思われた。ルネサンスの架け橋であるジョットの絵でも、それは同じ。そのあたりが、完全な『ルネサンス』とは言えないゆえんだ」

マ「ということは、次のルネサンスでは……」

梓「さて、その辺の詳しいところは、次のルネサンスの章で解説しよう」

この記事のまとめ

梓「今回は次の3つのことを覚えておくといい」

①中世では、ギリシャ・ローマ神話の題材は下火になる代わりに、キリスト教が題材に選ばれた。

②ロマネスク美術では、俗世を超越した近づきづらい神の世界が描かれた。

③対照的にゴシック美術では、絵画に人間らしさが生まれてくる

マ「それならマンボウでも覚えられます、はってはて♪」

梓「さて次からは、ルネサンスの世界を見てみよう」

《ページ内リンク》
☆大塚国際美術館 概説「丸1日楽しめる世界の絵画╿徳島県 鳴門市の大塚国際美術館」

☆美術史 解説
・古代
・中世
・ルネサンス
・バロック
・ロココ
・新古典主義とロマン主義
・写実主義
・印象派
・象徴主義

 

≫筆者:連理梓

参考文献
〇大塚国際美術館・NHK文化センター・有光出版株式会社(1998)『西洋絵画300選』(有光出版)
〇城一夫(2012)『常識として知っておきたい「美」の概念60』(パイ インターナショナル)
〇早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
〇早坂優子(1996)『巨匠に教わる絵画の見かた』(視覚デザイン研究所)

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