こんにちは、はてはてマンボウです。前回までは、写実主義の2つの西洋絵画の世界について教えてもらいました。今回はいよいよ印象派について教えてもらえるみたい。
《解説》ありふれた日常をそのままに╿絵画を語るとき我々の語ること⑦写実主義
↑「写実主義ってなに?」「自然主義とは違うの?」という方は、こちらの記事もチェックしてくれ~。まあんぼう~
梓「さて、今回はみんな大好き印象派だ」
マ「あ、連理梓さん。印象派展に行くといつも、あふれかえるマダムたちが食い入るように絵画に迫っているイメージが」
梓「でもせっかくなら離れて見よう!」
マ「はて、突然のマナー啓発」
梓「違う違う。印象派は光を表す作品で、特別な技法を使っているから、離れて見ないと意味がない」
マ「離れて見ようだなんて、なんだかテレビアニメの注意書きみたいねえ。しかし、光を表すとは、はて。なんとなくぼやっとした優雅な絵が印象派なんじゃ」
梓「印象派が使った技法を理解すれば、距離が大事なのもわかるはず。さて、今回も大塚国際美術館の絵画を中心に解説していくよ」
『印象派』ってどういう意味?
梓「印象派の名前の由来となったのがモネの『印象 日の出』」
マ「印象派の人たちも、例によって最初は叩かれたと聞いたことがあります」
梓「そのとおり。写実主義で出てきた『草上の昼食』のマネをリーダーと仰ぎ、新しい主題、新しい技法を求めた」
マ「世の中、新しいものはいつも反発を受けるものなんですねえ」
秘技・原色の筆触分割!
梓「さて、モネの発明したのが、筆触分割という技法」
マ「はて、かっこいい名前ねえ」
梓「マネのときに話したように、これまでの西洋絵画は、一続きの滑らかな絵を目指していた」
マ「一続きというよりは、ばらばらという感じですねえ」
マ「はてはて、なぜ急にアップを。こうなると、何が描いてあるかわからないです」
梓「それは、印象派が遠くから見ることを前提に絵を描いたからだ。印象派は原色の色を並べて描いていた。それを遠くから眺めると……」
梓「見ている人間の視覚の方で色が溶けあう『視覚混合』という効果が生まれる。パレットの中ではなく、人間の頭の中で色を混ぜたんだ」
マ「は、はてはて! 印象派にそんなすごい理屈があったとは。でも、その効果を生み出そうとしたのはなんのために?」
梓「印象派が表現したかったのは、外の景色の中の一瞬の光の揺らぎだ。きれめなく連続する要綱を表すために、このような描き方をした」
マ「なるほどお。印象派ってなんとなく明るい色彩の絵が多いなあと思っていましたが、そういうわけがあったんですねえ」
人物と印象派……ルノワール、ドガ、そしてやっぱりモネ
梓「印象派の人物がといえば、ルノワールだ」
マ「かわいい女の子や女性をいっぱい描いている人ですよね。明るい色がまた鮮やかねえ」
マ「印象派って、輪郭があいまいの絵が多いですよねえ」
梓「光と色彩を意識しているからね。滑らかさも輪郭もない世界が広がっている」
梓「ドガと言えば、バレエ。バレエと言えばドガ」
マ「モネの絵に比べて、ちょっとくらい感じがしますねえ」
梓「いいところに気づいたね」
梓「バレエは屋内競技。だから、この明かりは屋内証明だ。恣意的に照らされる明かりと踊り子たちの一瞬を切り取っている」
マ「あ、のんびりあくびしてますねえ」
梓「印象派は光を浴びる自然を求めたんだけど、ドガは異端だね。都会の様子をしばしば描いている」
梓「そしてどことなく、絵画のテーマ性に『影』があるというのも、大きな特徴だ」
梓「睡蓮の連作や風景画で有名なモネだが、日傘と女性のセットをテーマに何度も絵を描いている」
日本趣味を愛した印象派╿絵画の中のジャポニズム
梓「さて、再びモネの人物画。夭逝したカミーユ夫人を描いた一枚。その名もズバリ『ラ・ジャポネーズ』」
マ「鮮やかな赤の着物ですねえ。背景のうちわにも浮世絵がいっぱいです」
梓「腰のあたりだけをアップにすると、19世紀のフランスで描かれた絵だとは信じられないよね」
マ「うわあ、美人な奥さんと着物に目をとられて、こんなに大きな武士の絵に気づきませんでした、はてはて」
梓「既存の枠組みを飛びだした潮流の印象派に、日本趣味はどんどん取り入られた。今度はルノワール」
マ「またまたうちわが出てきましたねえ」
マ「うわあ、提灯まで出てきました、はてはて」
梓「ジョン・シンガー・サージェントの『カーネーション、リリー、リリー、ローズ』だ。その雰囲気とタイトルから、私にも忘れられない絵画の1つだ」
この記事のまとめ
梓「今回は次の3つのことを覚えておくといい」
①光の揺らぎを表そうとしたのが印象派
②印象派の絵は遠くから眺めるのが𠮷!
③日本への興味が絵画にも表された
《ページ内リンク》
☆大塚国際美術館 概説「丸1日楽しめる世界の絵画╿徳島県 鳴門市の大塚国際美術館」
☆美術史 解説
・古代
・中世
・ルネサンス
・バロック
・ロココ
・新古典主義とロマン主義
・写実主義
・印象派
・象徴主義
≫筆者:連理梓
※「はてはてマンボウのブログ」は移転しました。
はてはてマンボウの 教養回遊記 (hatehatemanbou.com)
参考文献
〇大塚国際美術館・NHK文化センター・有光出版株式会社(1998)『西洋絵画300選』(有光出版)
〇城一夫(2012)『常識として知っておきたい「美」の概念60』(パイ インターナショナル)
〇早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
〇山田五郎・こやま淳子(2015)『カラー版 ヘンタイ美術館』(ダイヤモンド社)