《解説》クリムトたちの妖しい世界╿絵画を語るとき我々の語ること⑨象徴主義

こんにちは、はてはてマンボウです。今回は二十世紀前後の絵画の世界を回遊できるみたいです、はて~。

《解説》光を求めてタッチも変わる╿絵画を語るとき我々の語ること⑧印象派
↑「印象派のことをもっと知りたい!」という方は、こちらの記事もチェックしてくれ~。まあんぼう~

梓「マンボウちゃんは、象徴主義って聞いたことあるかい」

マ「あ、連理梓さん。うーん、どの時代の、どこが主役の絵画かもよくわかっていないんです」

梓「妖しい女性の世界

マ「うわあ、なんだか久しぶりなこの感じ」

梓「マンボウちゃんの言うとおり、象徴主義は場所もテーマも多岐にわたり、掴みづらい世界だ。けれど、美しいという言葉だけでは説明できないような、妖しい魅力を持った女性画が数多く描かれた、魅力的な時代なんだ。

さて、今回も大塚国際館の絵画を一部用いて解説するよ」

象徴主義って、どんな絵画?

梓「19世紀後半になると、産業革命が豊かさをもたらし、西洋社会は華やかな時代を迎えた。けれど、進歩主義による表面的な豊かさに反発した芸術家たちに、デカダンスを求める傾向が生まれる」

マ「デカダンス?」

梓「退廃こそをよしとする風潮のこと」

マ「天邪鬼な人たちですねえ。でも、芸術家ってそんなものなのかも」

マ「ムンクの叫びは有名ですねえ」

梓「言いようのない心の中の不安を象徴とした絵画だと言われている。ちなみにこれはムンクが描いた『叫び』という作品だから『ムンクの叫び』というタイトルではない

マ「まあんぼう、初めて知りました」

梓「さて、これまで絵画は歴史上の物語や、現実世界の肖像画、目の前に広がる風景画など、形あるものをテーマとしそれを描き出そうとしてきた。一方、自分の心の動き、感情そのものを象徴として描き出そうとしたのが象徴主義というわけだ」

ラファエロ以前に立ち戻れ! ラファエル前派

梓「イギリスではこれまで、美術界を代表するような大きな潮流はなかったが、そんなイギリスに生まれたのがこのラファエル前派だ」

マ「ラファエル前派って、どういう意味ですか。ラファエルって天使の名前の1つですよね」

梓「ここでのラファエルは、イタリア語でラファエロになる」

マ「あ、それってもしかして」

梓「もちろん、ルネサンスの三巨匠の1人、ラファエロ・サンツィのことだ。西洋絵画では伝統的に、ラファエロこそを至上の存在と見なし、これをお手本としてきた。これに反発したのが、ラファエル前派。ラファエロ以前に立ち戻れってこと

マ「どういうところが、ラファエロ以前なんですか」

梓「とりわけ、ラファエロ以前というわけではない。特徴は、細かい観察からくる写実主義だからね」

マ「まぼ」

梓「これは、ジョン・エヴァレット・ミレイが描いた『オフィーリア』。シェイクスピアの『ハムレット』から来たワンシーン。主題が、中世の騎士物語や文学作品から来ているところのロマンチズムに、不思議な魅力がある。伝統的な主題や図像から離れようとしたのが、ラファエル前派ということ」

ギュスターヴ・モローとファム・ファタルの世界

梓「夢幻的な世界観を手掛けたのがフランスのギュスターヴ・モロー。この作品『一角獣』のように、多様な色彩のなかでなまめかしい女性を数多く描いた」

マ「たしかに、この『クレオパトラ』もエキゾチックな、なまめかしさがありますねえ」

梓「この時代、男と結ばれるべき女性、転じて結ばれたのち男を破滅の運命へと導く女性、すなわち『ファム・ファタル』(運命の女)が題材としても好まれた」

マ「ひええ、この女性は、生首を持っています」

梓「これはギリシャ神話の『オルフェウス』を題材にしている。竪琴の名手・オルフェウスは神話のなかでその肉体を八つ裂きにされて川に投げ捨てられるが、頭と竪琴は,海を越えて島に流れ着く」

マ「怖い話ですねえ」

梓「そんな怖い話こそが、退廃的なテーマとして受け入れられたのも象徴主義の特徴だ」

グスタフ・クリムトとエゴン・シーレの世界╿ウィーン分離派

梓「さて、ウィーン分離派と呼ばれる一派を築いたのがクリムトだ」

梓「『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』のように、金色の背景に装飾的なモザイクと写実的な女性を組み合わせた作品を数多く手がけた」

※ベルヴェデーレ宮殿(ウィーン)所蔵

梓「同じくウィーンで活躍したのが、エゴン・シーレだ。不安を掻きたてるような色遣いと、独特のデッサンで一度見たら忘れることができない」

死と隣り合わせの世界観

梓「これはアントワーヌ・ヴィールツの『麗しのロジーヌ』。ヴィールツはベルギー象徴主義の先駆的な存在だ」

マ「きれいな女性が、骸骨に向きあってるのがちょっと不気味です」

梓「ヴィールツ自身は『2人の乙女』が映っていると述べている。生ある女性が死を見つめているという構図。傍から見る私たちは、生と死について考えずにはいられなくなる」

※レオポルド美術館(ウィーン)所蔵

梓「これはクリムトの『死と生』。花に囲まれて生まれたての子どもを抱く家族たちの隣に、十字架をあしらった衣をまとう死神が備える」

マ「隣り合う死と生が象徴的に表されているという感じがしますねえ」

マ「このエゴンシーレの『死と乙女』は、女性の腕がとても細く見えます」

梓「よく見ると、男性の腕の下に女性の腕が隠れているとわかる」

梓「だけど一目では気づかない。その不自然さからくる不安な感情を掻きたてる効果も、あえて意識された構図だろう」

マ「まあんぼう。なるほど」

この記事のまとめ

梓「今回は次の3つのことを覚えておくといい」

①産業革命で豊かとなった社会への反発として、心の動きを表す象徴主義が生まれた。

②幻想的な雰囲気のなか、特に妖しさを放つファム・ファタル(運命の女)の絵が好まれた。

③死を見つめ、作品のなかに取り込もうとする動きがあった」

 

《ページ内リンク》
☆大塚国際美術館 概説「丸1日楽しめる世界の絵画╿徳島県 鳴門市の大塚国際美術館」

☆美術史 解説
・古代
・中世
・ルネサンス
・バロック
・ロココ
・新古典主義とロマン主義
・写実主義
・印象派
・象徴主義

≫筆者:連理梓

※「はてはてマンボウのブログ」は移転しました。

はてはてマンボウの 教養回遊記 (hatehatemanbou.com)

参考文献
〇大塚国際美術館・NHK文化センター・有光出版株式会社(1998)『西洋絵画300選』(有光出版)
〇小林智広(2014)『美しきヌード絵画の世界』(綜合図書)
〇小林智広(2014)『怖くて美しい世界の名画』(綜合図書)
〇早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
〇早坂優子(1996)『巨匠に教わる絵画の見かた』(視覚デザイン研究所)
〇フスライン=アルコ・アグネスほか(2016)『グスタフ・グリムト 女たちを描いた画家』(Grasl Druck&Neue Medien)

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