《解説》理論とロマンのせめぎあい╿絵画を語るとき我々の語ること⑥新古典主義とロマン主義

こんにちは、はてはてマンボウです。前回までは、ヤマザキマザック美術館の絵を中心に、ロココの西洋絵画の世界について教えてもらいました。今回は一つ時代が進んだ19世紀の絵画について教えてもらえるみたい。

ロココを求めてヤマザキマザックへ╿絵画を語るとき我々の語ること⑤ロココ
↑「ロココの美術をもっと知りたい!」「ヤマザキマザック美術館って?」という方は、こちらの記事もチェックしてくれ~。まあんぼう~

梓「さあ、美術の中心がフランスへと移ってきたね」

マ「あ、連理梓さん。19世紀の絵画にはどんな特徴が」

梓「ルネサンスをもう1度!」

マ「はて」

梓「ロマンのままにわがままに!」

マ「はて! 今回は2つのテーマが」

梓「19世紀には対照的な2つの絵画様式が生まれるんだ。

①新古典主義:ルネサンスの理想を追い求めた様式。ロココへの反動。

②ロマン主義:民族意識と中世への憧れ。新古典主義への反動。

以上の2つの視点から、19世紀を俯瞰していこう」

なぜ「新」古典主義?

マ「そもそも、どうして『新』古典主義なんですか」

梓「それは『古典主義』があったからにほかならない。古典の理知的な構成を理想とする流派だ」

マ「はて。これまでそんなの出てきましたっけ。あ、もしかして、ルネサンスのことですか」

梓「たしかにルネサンスもある種の古典主義だね。だけど西洋美術で特別に『古典主義』と呼ぶのは、バロックの時代のフランスの潮流だ」

マ「はて、バロック。たしか、ドラマチックで明暗を使いわける絵画が多かったですよね。カラヴァッジョとか」

梓「よく覚えていたね。あの劇的な描き方が全盛の時代に、理性的で落ち着いた構成のデッサンを通して古典世界を表現しようとしたフランスのグループが古典主義」

マ「その考えが復活したから、『新』古典主義ってことですか」

梓「そういうこと。ロココの時代を過ぎた18世紀後半、軽薄なロココへの反発から新しいムーヴメントが生まれる。古典主義よもう一度」

やっぱりフランスが中心! サロンが支配する美術界

梓「ロココの時代を支えたのは、フランス宮廷のサロンだったよね」

マ「いかにも、おフランス、ロココですね」

梓「そのサロン内で、『ロココはちょっと軽すぎたよなあ』という自己批判が起こる。そこで新たに求められたのが古典だった。ダヴィッドの『ホラティウスの誓い』は新古典主義へと向かう潮流を完成させた」

マ「ロココの時代に比べると、なんだかずっと重たい感じがしますねえ」

梓「デッサン重視、構図重視。動きは必要ないといった感じだね。ギリシャ彫刻のような静謐な美が求められた」

理性を求めてルネサンスへ

梓「ダヴィッドのあとを引きついたのが、ドミニク・アングル。新古典主義の親玉」

マ「滑らかな絵ですねえ、ラファエロみたい」

梓「ルネサンス以来、ラファエロは絵画の模範として受けつがれてきたからね」

ロマンを求めて「ここではないどこかへ」

梓「理性的な美の模範があると考えた新古典主義とは対照的に、自分の主観で感情のままにドラマチックな絵画を求めたのが、ロマン主義」

マ「たしかに、さっきまでの固かった新古典主義に比べると、ずいぶんと大胆な色彩」

梓「時代の影響もある。フランス革命のあとは、国民意識、ナショナリズムが世界中で高揚していた」

ドミニク・アングル、ウジェーヌ・ドラクロワをぐりぐりする

マ「あ、これは教科書にも載ってました」

梓「ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』。ロマン主義を代表する絵画だ。でも、ドラクロワはずっとアカデミーの世界から否定されてきた

マ「えっ、どうして」

梓「美術アカデミーを支配していたのが、新古典主義の親玉として君臨していたドミニク・アングル。理性的で安定した構図を重視する新古典主義への反動として出てきたのが、色彩を重視した大胆な構図のロマン主義だったものだから、アングルに排除され続けるんだ」

マ「ひええ、かわいそう」

梓「だけど、いまではロマン主義もきちんと評価されている。この絵画の躍動感なんか、新古典主義では見られない良さがあるよね」

マ「同じ絵でも時の運で評価が変わってしまうんですねえ」

この記事のまとめ

梓「今回は次の3つのことを覚えておくといい」

①ロココから引き続き絵画の中心はフランス

②軽薄なロココに反発して生まれたのが、理性的で固い新古典主義

③新古典主義に反発して生まれたのが、色彩を重視したロマン主義

マ「それならマンボウでも覚えられます、はってはて♪」

 

《ページ内リンク》
☆大塚国際美術館 概説「丸1日楽しめる世界の絵画╿徳島県 鳴門市の大塚国際美術館」

☆美術史 解説
・古代
・中世
・ルネサンス
・バロック
・ロココ
・新古典主義とロマン主義
・写実主義
・印象派
・象徴主義

≫筆者:連理梓

※「はてはてマンボウのブログ」は移転しました。

はてはてマンボウの 教養回遊記 (hatehatemanbou.com)

参考文献
〇大塚国際美術館・NHK文化センター・有光出版株式会社(1998)『西洋絵画300選』(有光出版)
〇城一夫(2012)『常識として知っておきたい「美」の概念60』(パイ インターナショナル)
〇早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
〇山田五郎・こやま淳子(2015)『カラー版 ヘンタイ美術館』(ダイヤモンド社)

 

関連記事

  1. 【岐阜】乗鞍 白雲荘のテラスでコーヒーブレイク&お部屋紹介│8月初旬2泊3日信州上高地と乗鞍岳の旅 その18

  2. 【長野】山形村の蕎麦集落「幸」で五目蕎麦と山菜蕎麦│8月初旬2泊3日信州上高地と乗鞍岳の旅 その23

  3. 【 5月の北海道 】函館湾に2キロも突き出る桟橋は日本最古のセメント工場のものだった │ 3泊4日函館の旅 その14

  4. 【 福岡市 】巨大なかき氷「雪山」の上下に抹茶|JR博多駅の「京はやしや」

  5. 【富山】山小屋とは思えない雷鳥荘の温泉と食事│紅葉の立山2泊3日の旅 その3

  6. 【 岩手 】日本最大の琥珀の産地、久慈市の琥珀博物館│【11月】秋田、北岩手、青森の3泊4日の旅 その3

  7. 【 北海道 】エゾシカのカルパッチョは臭み無し。弟子屈町の温泉ペンション、きらの宿すばる│1月の道東2泊3日の旅

  8. 【 静岡 】大井川鉄道、神尾駅にレンタカーで立ち寄りました。

  9. 【 福岡市 】 豪華絢爛なソーメンは「花魁」と命名しました。 │ 赤坂あきちゃん

  1. 【 青森 】津軽半島周遊 晩秋の青森の紅葉と八甲田の雪 3泊4日の…

    2022.01.04

  2. 【 島旅 神集島 】 佐賀県唐津市の神集島はフェリーで8分で到着し…

    2021.07.25

  3. 【 島旅 唐津市高島 】 宝当神社がある高島までフェリーで10分

    2021.07.06

  4. 【5月の北海道】3泊4日 函館を中心としたみどころいっぱいの道…

    2021.05.16

  5. 【 高級居酒屋 】 福岡市の田中田は一流の食材を美しく食べさせてく…

    2021.04.28

  6. 【 鹿児島奄美特集 】 さすが元沖縄です。奄美は人は少なく美しい海…

    2021.04.20

  7. 【特集:冬の十勝4日間】快晴と大雪、帯広、然別湖、旭岳、美瑛を…

    2021.03.18

  8. 【特集】 和食系、味、香り、彩り、器も最高 │ 赤坂あきちゃん

    2020.12.31

  9. 【 特集 : ニセコの温泉 】温泉付ペンションアダージョとヒルトン…

    2020.12.31

  10. 【特集:男池】大分、紅葉の宝泉寺温泉に泊まる1泊2日

    2020.12.31

  1. 【特集】鳥取砂丘とラベンダー色のらっきょうの花、そして城崎温泉…

    2020.12.14

  2. 【奈良の山手をめぐる旅】吉野、十津川村、飛鳥寺、伊賀上野城まで

    2016.04.09

  3. 【特集】鶴の湯|秋田県乳頭温泉

    2019.03.19

  4. 【厳冬の2月、道東2泊3日の旅】網走の流氷、カヌー釧路川源流下…

    2020.02.18

  5. 【1月の島根県松江】宍道湖七珍を楽しむも大雪で特急やくもで博多…

    2016.01.23

  6. 【低糖質・低カロリー・野菜ソムリエ】Agro(アグロと読みます)福…

    2019.02.27

  7. 【5月の北海道】3泊4日 函館を中心としたみどころいっぱいの道…

    2021.05.16

  8. 【紅葉の旅 】 白馬・小谷・栂池・乗鞍高原3泊4日の旅 2017.10.1…

    2017.10.13

  9. 【仙台:国分町の地雷也】キンキに拘った炭火焼きのお店

    2019.05.18

  10. 【6月初旬】温泉のニセコ&ウニの積丹半島3泊4日

    2019.06.08

  1. 【特集】奇想の画家ってなんですか?

    2019.02.17

  2. 【特集】仏の世界の四階層╿如来・菩薩・明王・天

    2019.02.07